一般社団法人日本医療バランスト・スコアカード研究学会の誕生まで
(2012年12月 改訂版)
医療バランスト・スコアカード研究学会
会長 髙橋淑郎
1994年3月ごろトロント大学医学部Department of Health Administration(現Department of Health Policy, Management, and Evaluation)が、オンタリオ病院協会からの医療BSCによる成果測定と評価に関する受託研究のプロポーザルに対して、当時トロント大学にいたGeorge H. Pink准教授から私にプロポーザルへのコメントを求めたれた時に初めて医療BSCと正面から向き合いました。それまで私の中で、病院に応用できる論文として、会計の一つの道具であったBSCが、経営という、医療という大きな枠組みに、私の中で転換をした瞬間でもあります。
その後、日本でもいくつかの病院BSC事例が先端的、実験的に出現し、これまで企業のBSCを行ってきた研究者が、非営利組織、学校、自治体なかでも病院へ眼を向けだしました。
当時、日本で会計(学)領域の人々はBSCについて論じる人は何人もいましたし、公認会計士など職業会計人の方々もかなり注目してきました。しかしながら、当時の日本ではBSCは、会計の枠を超えることはありませんでした。さらに研究でいえば、医療BSC領域では、海外の事例の紹介程度の狭い会計領域での議論に終始しており、現場の病院経営に役立つには遠い状況でした。
1996年ごろ、聖路加国際病院の渡辺明良マネジャー(現、聖路加看護大学事務局長、理事)を誘ってカナダのオンタリオ州の病院BSCの調査を行いました。現地でその利用と成果に衝撃を受け、視察中の毎日の議論の中から本格的な研究と実践が必要と認識し、帰国後、聖路加国際病院の中村彰吾事務局長(現、東京都老人医療センター常務理事)、中央青山監査法人(当時)の樋口幸一公認会計士(現、樋口公認会計士事務所)、塩田龍海公認会計士(現、あさがお経営研究所)、私のゼミのOBである、狩俣一郎(当時、日本医療機能評価機構、現、豊見城中央病院)、梅井崇仁(現、聖路加国際病院)、上村明廣(現、監査法人トーマツ)、鈴木多門(当時、日本医療機能評価機構、現、仙台東脳神経外科病院)、坂俊英(当時日本大学大学院商学研究科経営学専攻院生、現、坂泌尿器科病院)と聖路加国際病院の市川雅人(現、(財)ライフサイエンスセンター事務局次長)、三谷嘉章(現、慶応義塾大学病院)の皆さんと医療BSCの研究会を発足させたことから始まりました。
その後、BSCの医療での展開の環境が整ってきたので、BSCを日本の病院に浸透させるには研究者と病院の実務者が一緒になった現場重視の学会が必要と感じ、仲間と議論し、多くの先輩方とご相談し、学会を立ち上げる準備にはいりました。
そこで聖路加国際病院の日野原重明理事長、櫻井健司院長(当時)、日本大学医学部大道久教授(当時、現、社会保険横浜中央病院院長)、熊本済生会病院須古博信院長(当時)、正木義博事務長(当時)、竹田綜合病院竹田秀理事長、川越胃腸病院望月智行理事長、同須藤秀一常務理事、日本大学薬学部白神誠教授、国際医療福祉大学佐藤貴一郎教授(当時)、早稲田大学清水孝教授、長谷川惠一教授、福井県済生会病院の斎藤哲哉経営企画課長(当時、現事務部次長)、長岡ヘルスケアセンター中野種樹理事長、武田病院グループ武田隆久理事長、医真会八尾総合病院の故前田純典専務理事(当時)、社会医療法人カレスサッポロの西村昭男理事長など多くの皆様と学会に発展させることができました。
2003年10月16日に聖路加国際病院にて学会設立のプレス発表を行い、同年11月22日に東京銀座の三笠会館にて一般社団法人日本医療バランスト・スコアカード研究学会の発起人会が開催しました。そこで若輩ながら私が会長に選出されました。これにより正式に一般社団法人日本医療バランスト・スコアカード研究学会が誕生した次第です。
私は経営学の出身で大学院から病院経営を専一に研究し、医学部、医療福祉学部、商学部で研究・教育に身を置き、一方で、病院の現場も数多く踏んできたという意味で、医療と社会科学を結ぶ架け橋として、現場と研究者を結ぶ架け橋としての役割をおおせつかっていると理解しています。また、学会の運営として、現場に精通した理論派の病院の事務職の代表として聖路加国際病院(現、看護大学事務局長)の渡辺明良理事に事務局長、企画・研修担当理事として本学会事務局を当初からまとめてもらっています。
2004年1月10日に日本大学会館にて、第1回日本医療バランスト・スコアカード研究学会学術総会(学術総会総会長 高橋淑郎)と第1回の理事会、評議員会が開催されました。
その後、同年11月に第2回学術総会(学術総会総会長 聖路加国際病院櫻井健司院長)、翌年から年1回として、第3回学術総会(熊本済生会病院須古博信院長)、第4回学術総会(学術総会総会長 日本大学医学部大道久教授)、第5回学術総会(学術総会総会長 医療法人渓仁会グループ秋野豊明CEO)、第6回学術総会(学術総会総会長 福井県済生会病院田中延善院長代理)、本年は、第7回学術総会(学術総会総会長 JA相模原協同病院高野靖悟院長)第8回学術総会(学術総会総会長 医真会八尾総合病院 森 功理事長)、第9回(学術総会総会長 ちばなクリニック仲田清剛院長)、第10回(学術総会総会長 髙橋昌里 日本大学医学部教授、駿河台日本大学病院副院長)、第11回は松山赤十字病院院長渕上忠彦先生にお願いし、2013年に松山市で開催予定です。
さらに、各委員会活動も活発に行っています。企画研修委員会では、BSCフォーラムをこれまで年間2回全国で開催し、年に2回BSC導入ワークショップを開催してきました。また、研究委員会では、導入ワークショップがどのように効果があったかなどを検証し、さらに自治体病院や日本医療機能評価機構認定病院へのBSC利用の調査などを行い、学術総会で発表してきました。雑誌編集員会では、これまで年1回の学術雑誌を発行してきましたが、第8巻からは投稿論文も多く頂き、依頼論文なども交えながら年2回の発行と現場と理論を結びつけるような体制をとっています。その他、事務局として渡辺明良事務局長以下、市川雅人(聖路加国際病院)、梅井崇仁(聖路加国際病院)、上村明廣(有限監査法人トーマツ)、田宮悦子(大成建設(株))、佐藤英明((株)リゾートトラスト)が機能しています。
学会事務局のルーチンワークは、学会事務代行として、国際文献社に委託し、2013年1月からは、3回目のホームページの大規模改築をしました。
このように、設立以来10年を経て、また新しいステージに向かって会員の皆様に、より良い会員サービスを、そして日本の医療や福祉、社会に貢献できるように、役員、事務局一同邁進していくよう努力していきます。