学会の概要
1990年代に米国で開発されたバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard: BSC)は,従来の財務データ中心の経営分析手法と異なり,「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という多面的な視点から,財務的指標だけでなく非財務的指標も定量データとして経営管理に適用させることができる戦略的マネジメントツールです。
これからの医療経営を考えるとき、我が国においてもこのBSCの手法を理解し,医療経営の実際の場において正しく導入・活用する必要があります。また,各医療機関がBSCを研究し,その成果を発表し,その結果,BSCの手法が幅広く普及することにより,医療経営の質の向上に大きく寄与するものと期待されます。そこで,BSCに少しでも関心のある方々の共通の議論の場,研究成果・実践成果の発表の場,相互啓発の場として,平成15年(2003年)11月に日本医療バランスト・スコアカード研究学会(Japan Association for Healthcare Balanced Scorecard Studies)が設立されました。
学会のミッション・ビジョン・バリュー
- <ミッション>
- 医療経営・医療政策におけるBSCによる戦略的マネジメントの啓発と普及・推進
- 医療経営・医療政策におけるBSCの研究推進
- BSCによる医療資源の効率的利用と医療経営の質の向上による社会への貢献
- <ビジョン>
- BSCの活用による戦略的な医療経営と組織改革の実現
- BSCによる戦略的経営に必要な人材の育成
- <バリュー>
- 会員に体系的な戦略マネジメントの知識・技術の提供
- 会員に継続的な研究活動の機会の提供
- 会員にBSCを通じたネットワークの提供
- 会員の声に耳を傾けたイノベーションの実現
学会の活動
本学会の主な活動内容は以下のとおりです。
- 学術総会・会員総会の開催
- 学会誌の発行
- フォーラム/ワークショップ/基礎理論講座の開催
- 研究委員会による調査研究および研究助成
- 学会認定指導者の育成と資格審査
- 海外の関連団体との協働・相互交流
- ニューズレターの発行
- 1.学術総会・会員総会の開催
-
会員の研究成果の発表の場,会員相互のコミュニケーション・研鑽の場として,年1回,秋期に学術総会を開催しています。
毎回,特定のテーマを設定しての基調講演,特別講演(招待講演),シンポジウムをはじめ,特定のテーマにとらわれない一般演題による口頭発表セッション,ポスターセッションでの研究・実践成果の発表の場として活用されています。また,特定の領域について,その領域の専門家によるランチョンセミナーを開催するとともに,BSCの導入・実施に関わるさまざまな問題・疑問にお答えするBSC無料相談ブースも設置されています。
学術総会と同時に会員総会が開催され,学会活動の成果・問題点・今後の方向性等について,会員各位が直接討論に加わって頂くことで,会員の生の声を反映して頂くとともに,夕刻に開催される懇親会とともに会員相互のコミュニケーションの場として活用して頂いています。 - 2.学会誌の発行
-
本学会では,研究成果の発表,情報交換の場として,学術研究誌「医療バランスト・スコアカード研究」(ISSN 1349-6662)を発行しています。第1巻(2004年)から第7巻(2010年)までは毎年1号ずつ,第8巻(2011年)以降は毎年2号(第1号,第2号)ずつ発行しています。
各巻第1号は学術総会特集号であり,第2号は一般投稿論文号です。 - 3.フォーラム/ワークショップ/基礎理論講座の開催
-
本学会では,学術総会以外にも会員個人・団体はもちろん,これからBSCを導入しようと考えている医療機関の方々を対象として,随時,フォーラム,ワークショップ,基礎理論講座等のイベントを開催しており,正しいBSCの導入・活用方法を理解して,より多くの医療機関で戦略的経営管理にBSCを役立てていただけるよう啓蒙・支援活動を行なっています。
(1) BSCフォーラムこのフォーラムは、本学会の設立当初から,BSCの普及と導入の促進を図るために,全国で毎年数回行なってきました。さらに2010年からは,BSCを広めるという趣旨だけでなく,すでにBSCを導入している医療機関の方々の実践に役立つような内容を主眼にしたフォーラムも年1回行うことにしています。例えば,「BSC導入の障害とその克服」,「BSCを病院全体から部門へのカスケードする際の課題と解決」等,実際にBSCを運用し始めたときに直面する問題の解決,上手に活用している病院・施設の導入事例等,実践の場で活用できるものをテーマとして開催しています。
(2) ワークショップワークショップには大きく2つの目的があります。第1は,これからBSCを導入しようとする医療機関のトップマネジメントや導入責任者などの方々に導入プロセスを学んでいただくことです(BSC導入ワークショップ)。第2は,すでにBSCを導入している病院の新人職員,あるいはBSC経験者の方々のブラッシュアップのために用意しています。
(3) 基礎理論講座
その内容は,2日間で導入プロセスと運用のポイントを学べるように,BSCの基本概念(講義),SWOT分析(実習),クロス分析(実習),2次元展開法(実習),戦略テーマの抽出(実習),戦略マップ作成(実習),スコアカード作成(実習),BSCの運用(講義)を順に経験していただきます。
少人数制で,経験豊富な学会認定の指導者(ファシリテータ)が専属でついて指導しますので,2日間じっくり自分の病院や施設を振り返り,多職種間で協議をして戦略を立案していくという充実感の得られるワークショップとなっています。初めてBSCを導入する時には,多くの医療機関の方々はBSCを勉強しようと努力しているのですが,一度導入してしまうと,継続してBSCを勉強しようとする意識が希薄になってくることが経験的に分かっています。これはBSCの導入に中心的役割を果たした方々にも同様の傾向があります。また,BSCの勉強も系統的ではなく,Kaplanらの正統的な考え方から外れた簡単なhow toものの書籍や講演などから学ぶことが多いことも分かってきました。そこで,本学会では1日あるいは半日程度で,正統派のBSCの基礎理論を学ぶ講座を設置しています。したがってこの講座は,これからBSCを導入するために勉強しようとしている方々はもちろん,すでにBSC導入している医療機関の方々にも,知識の確認や最新情報の入手などに役立つものと考えています。
フォーラム/ワークショップ/基礎理論講座の開催については,学会ニューズレターおよびこのホームページで適時お知らせいたします。
- 4.研究委員会による調査研究および研究助成
-
本学会の研究委員会では,BSCを医療経営に適用するときの理論的な諸問題,導入・実施に関わる諸側面,普及状況と今後の展開等について,継続的な調査・研究を進めてきました。研究の成果は随時,学術総会で報告を行うとともに,学会誌にも掲載してきました。
現在の研究委員会は,委員会自体が研究するという方向から,会員の研究をサポートするための研究支援を行う方向に活動の重点を位置付けています。その一環として,BSCに関連する翻訳用語が混乱している現状を改善するために,例えば,事後指標と遅行指標,先行指標とプロセス指標などの混乱を整理する検討を進めています。
また,本学会では,個人正会員が研究代表者となって行う個人研究・共同研究に対して,研究助成を行なっています。 - 5.学会認定指導者の育成と資格審査
-
本学会では,BSCが医療経営の実際において正しく導入・活用されるためには,BSCに関する学術的知識・技術・実務経験の面で一定水準以上の経験・能力をもつ指導者による適切な指導・支援(ファシリテーション)が不可欠であるとの認識に基づいて,このような経験・能力をもつ専門家を育成し,本学会が主催する審査試験に合格することで,その能力を認定する認定指導者制度を実施しています。また,認定指導者に対しては,毎年,継続研修を受けることが義務づけられています。
- 6.海外の関連団体との協働・相互交流
-
台湾HBSC学会(台灣健康産業平衡計分卡管理協會:THBSC)(http://www.hbsc.org.tw/)とは2010年にこの学会が設立される以前から交流があり,2010年の設立総会以来,THBSCが毎年主催する国際シンポジウムに本学会の会長を始め,本学会の会員が招待講演や一般論文発表に参加しています。また,THBSCからも本学会の学術総会やフォーラムに参加いただいており,相互交流を図っています。
また,米国,カナダ,シンガポール,英国,ドイツ等,海外の研究者,医療機関のトップマネジメント,政府関係者を学術総会やフォーラムにお招きして,各国における医療BSCの特色や普及状況,問題点等を紹介していただいています。一方,本学会からも2004年9月には「カナダ・アメリカの医療BSC調査団」と2013年2月には「カナダ医療BSC調査団」を結成して,カナダ・オンタリオ州における医療BSCの実態を現地に出向いて視察・研究してきました。 - 7.ニューズレターの発行
-
本学会では,年4回から6回の頻度でニューズレターを発行し,学会行事のご案内・ご報告をはじめ,学術総会・会員総会,学会誌,フォーラム等ではお伝えしきれない,よりタイムリーなコミュニケーション手段として学会ホームページとともに活用しています。
本学会に入会を希望される方へ
- 1. 個人正会員
-
本会の目的に賛同する者で,当該年度の会費をそえ所定の申込書を学会事務局に提出し,理事会によって承認されたもの
- 2. 名誉会員
-
本会の進歩発展に特に功績のあった者で,別に定める内規により選出され,評議員の推薦により理事会,評議員会の議を経て,総会で承認されたもの
- 3.賛助会員
-
本会の目的に賛同する個人または団体で,所定の申込書を学会事務局に提出し,理事会の承認を受け所定の会費を納めたもの
- 学会誌「医療バランスト・スコアカード研究」の配布
- 各種学会行事の案内,ニューズレターの配布
- 学術研究総会への優待参加,研究成果の発表
- フォーラム/ワークショップ/基礎理論講座等への優待参加
- 海外視察,海外学会への優待参加
- 学会主催のBSC無料相談ブースの利用
- 賛助会員は,学術総会に4名まで無料で参加することができます。参加は無記名の4名ですので,今すぐに勉強したい病院や会社の職員の方々に勉強の機会としてご利用いただけます。
会員の年会費は以下の通りです(2015年5月現在)
・個人正会員 10,000円
・賛助会員 100,000円
(注)年会費には学会誌の購読料が含まれています。
賛助会員は4名までの学術総会参加と学術総会要録1冊の配布を受けることができます。
入会のお申し込みは,下記の「オンライン入会申込フォーム」をご利用いただくか,学会事務局までご連絡ください。
■ オンライン入会申込フォーム
【入会申し込み・問い合わせ先】
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5
アカデミーセンター
一般社団法人日本医療バランスト・スコアカード研究学会 事務局
TEL: 03-6824-9376
FAX: 03-5227-8631
E-mail: info@hbsc.jp